片麻痺 家族の支え方

不幸にも脳疾患などを発症し、片麻痺になってしまった方にとって毎日の生活は、健常者である我々には想像に耐えがたい苦痛やストレス、不便を感じながら、日々過ごされていることと思います。
そんな中で、片麻痺の方がより良い機能回復や生活を目指すにあたって、ご本人様の努力も大切ですが、それをサポートするご家族様の存在がすごく重要な役割を担っているように感じます。
では、どのようなサポートが必要なのか私自身が考えられるものとして、大きく5つに大別できるのではと思っています。
①身体的サポート・・・ストレッチや自主訓練のサポート、病院のことに関するメディカルケア
②生活面でのサポート・・・移乗、移動、食事、排せつなどの介助による介護面全般
③経済的サポート・・・リハビリ費用、施設入所、ショートステイ、介助・介護などにかかるすべての費用
④精神的サポート・・・希望をもたせる、寄り添う、支えるなど精神面でのケア
⑤医療面でのサポート・・・再発防止のための定期健診、リハビリなど
など
まだまだサポートしてあげなければならないことはたくさんあると思います。
とりあえず今回のテーマは、
「片麻痺の方のご家族様の支え方」
について当院の考え方を述べていきたいと思います。
目次
①身体的サポートって何をするの?
身体的サポートと聞くと、半身麻痺により体が不自由になってしまったため、何かする時に手助けをしてあげる、いわゆる介護や介助が真っ先に浮かんでしまいますよね!?
当然出来ないものに対してや、転倒やケガのリスクがある場合などは手助け(介助)が必要だと思います。
それ以外にも、動かせない手足などに対して、拘縮や筋萎縮、痙縮の予防、関節可動域確保、痛み、シビレなどの改善、予防、血行促進など最終的には機能回復といった目的の為にご家族様が片麻痺の方にストレッチや可動域訓練のサポートも時には必要だと言えます。
そのためにストレッチや運動、家庭用の低周波治療器をつけてリラクゼーションをはかってあげたり、痛み、シビレ、などと言った症状の所をさすってあげるだけでも、片麻痺で体に負担がかかった所が楽になりありがたいものだと思います。
上記のように、片麻痺の方ご自身ではどうしても出来ない事への身体的サポートもご家族様の協力があってこそ機能回復や生活の安定につながると言えます。
②生活面でのサポート
片麻痺の人はその方の症状の重さ軽さなどにより、それぞれの生活様式が変わってきてしまうのはやもうえません。
軽症の方は、ご自分でほとんどのことを自主的に行えるが、症状が重くなればなるほどご家族様や周りの方のサポートを必要とする割合が増えると同時に片麻痺の方が生活していく上で重要な役割を担っています。
その中で生活面でのサポートとは、どのようなものがあるのか考えてみました。
- 食事
- 排せつ(トイレ)
- 着替え
- 入浴
- 移動、移乗など
が大まかな分類としてはあげられると思います。
食事
食事の際は、麻痺があっても健側の手で箸やスプーンなどを持ちご自分で食べることが出来るはずです。
しかし、片麻痺の症状が重度になればなるほど介助する必要度が出てきます。
また、嚥下や咀嚼機能に障害がある場合には、食べやすいように、細かくしたり、ペーストしたりと何かと食事を作るという面でもサポートが必要になってしまいますよね。
排せつ(トイレ)
片麻痺でも重度、いわゆる寝たきりの症状でない限りこのサポートについては少ないと思われます。
ただし、トイレまでの転倒防止のためのサポート(介助)は必要であっても、重度の片麻痺の方でない限り、排せつにおいてのサポートは小さいものと考えています。
着替え
片麻痺の症状の違いはあれど、着替えに関しては、多かれ少なかれサポートは必要になる時期があると言えます。
洋服に袖を通す際の介助の場合でも上肢が少しでも動かせる方と、動かせない方とでは労力が違います。
麻痺があっても、ある程度体を動かせることができる方などはご自分ですべて行えるため、サポートの必要性はグーっと減ることになります。
入浴
片麻痺があってもほぼすべてを自立して生活を送れる方以外は、なかなかご家族様では難しいサポートになりますね。
そのため、デイサービス、ご自宅に訪問してもらい介護のプロなどのサポートを受けて入浴することになります。
ご家族様がしてあげれない分、経済的サポートにより成り立っていますよね。
移動・移乗
片麻痺の方にとって、何かをするために移動・移乗する動作は転倒のリスクから、自立できる方以外は何かしらのサポートが必要のになることが多いと思います。
移動、移乗など生活動作が安定するまでの間は特にご家族様のサポートは必要不可欠になりますよね。
③経済的サポートとは
読んで字のごとく経済的=金銭的サポートになりますよね。
片麻痺の方が、社会復帰して経済的に安定し、自立した生活が送れるようになるまでは、ご家族様、または自治体などの経済的支援はかかせません。
そこに片麻痺の方は、プラスアルファーとして脳梗塞や脳出血の再発防止のための定期健診、不自由になってしまった体をサポートしてくれる杖、車イス、介護ベットなどといった代表的な介護用品から、症状のレベルによっては、バリアフリー化、手すり設置衣服から介護用オムツまでといった、生活を良くしてくれる介護用品まで。
また、今より少しでも良くなるため、状態を維持していくために必要なリハビリなどの経済的サポートが考えられます。
それに移動手段としての介護タクシーなんかもありますね。
これらは、介護保険が利用できるからと言っても、自己負担額は発生します。
介護用品から検診、リハビリ訓練などと経済的負担は、計り知れませんよね。
だからと言って経済的サポートをなくしたり減らしたりするということは、片麻痺の方の生活の安定や機能回復の道を閉ざすという事になりかねません。
何故、経済的支援(サポート)は必要なのか?
当然、生きていくために必要最低限、必要な衣食住は健常な時であろうと必要な事です。
しかし、なぜ片麻痺の方が経済的サポートを受ける必要があるのかというと、
- 片麻痺機能回復を少しでもとげてもらうため
- 日常生活をより良くしてもらうため
- 転倒などの危険回避
- ご家族様、周囲の方の介護負担の軽減のため
- 社会復帰をとげ自立した生活基盤を立ててもらうため
以上の目標を遂行してもらうために、経済的サポートはなくてはならないものだと考えています。
片麻痺の方の機能回復、自立はもちろんのこと、ご家族様、周囲の方にとっても介護における負担軽減は、双方にとって生活を豊かにしてくれるために必要であると言えます。
④精神的サポートとは
精神的サポートとは、いったいどういうことでしょうか?
いわゆる片麻痺の方を精神面で支える、寄り添う、希望を持たせることだと思っています。
よく耳にする精神的サポートとして、
「リハビリがんばれ!!、もっとがんばれば良くなるよ!!」
と何気にご家族様は、片麻痺の回復度合いやお体を心配するあまり片麻痺の方を鼓舞して支えている光景を見かけます。
これも精神的サポートの仕方の1つだとは思います。
しかし、良かれと思っていた掛け声が片麻痺の方たちにとっては、ものすごく重荷になっているということをご存じでしたか?
当院のクライアント様などには、ご家族様には、あまりリハビリを”がんばれ!!”と言わないように心がけてもらっています。
なぜならば、片麻痺の方は普通の日常生活自体が健常者の方の何十倍、何百倍もの負担を体にしいられて生活しています。
そこにがんばれ、もっとがんばれ、まだまだリハビリが足りないよなどという言葉は、毎日必死にがんばって片麻痺と戦っているご本人に重荷を背負わせることになります。
ですから頑張れと鼓舞するのではなく、さりげなく見守ってあげてください。
それともう一つ大事な精神的サポートの一つとして、片麻痺の方ご本人の日々の成長をほめてあげて下さい。
「がんばれ、もっとがんばれ!!」と抽象的でなく、ご家族様も日常生活動作や変化をこと細かく観察する眼を持ってあげて下さい。
以前できなかった事や、ほんの微々たる変化でも、以前とは違っているよと褒めてあげて下さい。
そのことできっとご本人も気分を良くするのと同時に、少しづつでも良くなっているということを周りの方が気付かせてあげて下さい。
片麻痺の方にとって、微々たる変化の積み重ねが、3ヶ月、6ヶ月、1年と時間が経った時に大きな変化として感じることができます。
ただ日々の変化などには、ご本人自体が気付くことがほぼないに等しいと言えます。
リハビリをがんばってしていても変化がない、良くならないなどとおっしゃっている方がいたら、ほんの少しの変化でもいいので探して褒めてあげて下さい。
歩いている姿勢が良くなったね、肘の曲がっているのが少し伸びたね。、前より腕が上がるようになったね、着替えさせやすくなったね、などと変化を認めてあげることで、ご本人も気分よくリハビリに取り組めるようになると思います。
このように片麻痺の方の機能回復においてご家族様が寄り添い、支え、希望を持たせるようにする精神的サポートは、ものすごく重要な役割を担っていると言えます。
※すべての方にあてはまる訳ではないので、ご自分達には関係ないと思われた方はご参考になさらないで下さいね。
⑤医療面でのサポートとは
回復期を終え、維持期になると病院とのかかわりは希薄になってきます。
そんな中、脳卒中の再発リスクは時間の経過とともになくなった訳ではなく、常に付きまとっています。
再発防止のための定期検診や、体調管理、リハビリを含めた医療面でのサポートも必要になります。
まとめ
片麻痺の方に対するご家族様の支え方について、上記したようなことが必要であるという事をご理解いただけましたか?
ご家族様の支えがあって、良い機能回復、安定した生活を遂げていくものだと思っています。
片麻痺になってしまった方も、そのご家族様もどちらも大変であることは想像がつきます。
まずは、片麻痺になられた方が少しでも良い機能回復をとげてもらい、転倒などのリスクを減らし、日常生活をより良くしてもらうためにご家族様が支えてあげられると良いと考えています。
それに、ご家族様や周囲の方たちの介護負担の軽減につながり、しいてはご本人が社会復帰をとげて自立した生活基盤を立ててもらえれば双方にとって、将来的にウィンウィンの関係が築かれることだと思っています。
ご家族様が支える意義として、
- 良い機能回復を少しでもとげてもらうため
- 日常生活をより良くしてもらうため
- 転倒などの危険回避
- ご家族様、周囲の方の介護負担の軽減のため
- 社会復帰をとげ自立した生活基盤を立ててもらうため
以上のことだと、考えています。